福岡市西部の住宅地にあるプロショップ「南米商会」に通ううちに自転車のとりこになった仲間が、自然発生的に集まって練習会を自主運営しています。休日の練習会=朝練だけに飽き足らず、何かと理由をつけて集まっては呑み、悔い…んにゃ食い、走っております。秋恒例の「板屋峠ヒルクライム」とDr.K主催のイベントについては、別コンテンツにてご紹介しておりますが、その他、多分に思いつきで「やろっか」となったイベントをこちらにまとめてみました。

2013全日本自転車選手権ロード観戦
6月23日に大分県豊後大野市で開催された「全日本自転車選手権ロードレース」を観戦しました。九州にロード競技の国内トップレベルの選手が集結するのは、めったにないことですのでこんなチャンスを逃すことはありません。いくらテレビやネットが発達しても、生と疑似体験は全く別のもの。そのことを改めて認識させられた観戦でもありました。
コースは、こんな感じ。一周15km、獲得標高503m、平均斜度上り7.7%(いずれもルートラボによる)を12周計180km。上りと下りしかない山岳コース。特に後半は12%前後の急坂が5.7kmにわたって続きます。福岡在住の方は、雷山観音の急坂をイメージしてもらえば。あれのきつくなってからの坂が5.7km続くと思っていただければ。
大本命は、ユーロップカーの新城幸也選手、今年からチーム右京で走るヨーロッパ帰りのクライマー土井雪広選手。これにアンカー、愛三、ニッポなどの国内トップ選手が絡む、という図式。
新城を国内選手がどれだけ揺さぶり力を削いで勝負に持って行くか、新城をサポートする選手はいるか……などなど素人なりにあーだこーだと好き勝手に予想するのもレースの楽しみのひとつですね。

で、結果は皆さんご承知の通り。序盤から逃げに乗った(とゆーか自分でリードした?)新城選手が終始レースをリードし、他をまったく寄せ付けずに格の違いを見せつけて優勝。誰かが飛び出す、のではなくて周回を重ねるごとに脱落していくという過酷な我慢大会。中盤で早くも集団はどこにも形成されず、新城、土井選手が他を大きく引き離し、それも10周目に入って新城選手が飛び出すと土井選手はまったく反応できずに、勝負が決まってしまいました。
上りと下りだけで駆け引きの余地のないえげつないコースでは仕方がありませんが、30分ちょっとのラップを淡々とこなし途中振り落としにかかった時は28分辺りまでペースを上げ、最終ラップの厳しい上りはダンシングでファンサービスをする余裕さえ見せた新城選手のずば抜けた強さを見せつけられたレースでした。
しっかし、全日本クラスの選手、ってのはすごいですな。完走した選手は、あの5.7kmの激坂を、計12回。後半だって、それなりのペースで淡々と上っていきます(本当はきついんだろうけど)。新城選手が別格に速かっただったってだけで。

で、新城選手と他の選手の違いは何?
新城選手が素質に恵まれていることは認める。でも全日本トップ級になればそんなもん紙一重。練習量? 特に国内選手が少ないわけではないでしょう。
もし違いがあるとしたら、新城選手はヨーロッパに渡り毎週のようにレースをこなすことで体を造っていること。仲間とそんな話になりました。
話は飛んで、マラソン。ここ数年注目を浴びている埼玉県庁の川内優選手。彼も毎週のようにレースに出場しながら実業団選手も真っ青の成績を残しています。マラソンはトップレベルになると距離(42.195km)に引っかけて「死に行く覚悟」とまで言われる過酷な競技。1年に1〜2本しか走ってはいけない、という「常識」を破って記録を伸ばした選手です。
素人なのでその是非は知らんが、実業団に比べればはるかに環境、条件の悪い中で互した記録を出しているのは事実。その支えになっているのが、本番をたくさんこなすことで高負荷トレーニングにしている、ということでしょう。

スポーツはどんなレベルでも速く強くなろうと思ったら、高負荷のトレーニングが欠かせません。自転車なら「できるだけ速いスピードを保ち長く」乗ること。
これ、一番効率的にできるのはレース本番、なんですな。
ヨーロッパでは毎週末だけでなく水曜日にもレースが開催されているといいます。そうやって最高レベルの高負荷トレーニングを繰り返していれば、どんどん強くなる。
翻って日本ではレースの数も圧倒的に少ないし、よほど良いコースを見つけない限り、ロード練習では信号があるたびに止まらざるを得ない。(信号無視して練習している、というのは一応なしね)。こうした環境の違いはそう簡単に埋まらないような気がしますね。
今回のレース中、新城選手のペダリングはさほど早くありませんでした。回転数は余り上げてないのにグングン上っていく。一方で追いかける国内選手はきれいなペダリングなのに追い付かない、どころか、どんどん離されていく。かけているギア比が違ううえに新城選手の速度は一向に落ちない。数多くレースをこなすことで鍛えた心肺機能が重いギア比を最後まで使いこなし、その気になればいつでも回転を上げてスピードアップできる。
国内だけで世界に通用する選手を育てるのは、よほど知恵を絞らないと難しいような気がします。
2013/6/25