健康と環境の追い風に乗って、広がる自転車人気。スポーツとしての道具として市民権を得るにしたがって、関連書籍も増えてきました。マニアックな読み物、自転車をテーマにした小説、漫画、私のように古い人間には予想だにしなかったメディアにも自転車、それもかなりマニアックな話が掲載される時代になりました。折に触れて「親父のつぶやき」で紹介させていただいてはおりますが、一度まとめてみてもよかんベェ、ということで自転車をテーマにした出版物を見かけるたんびに取り上げてみます。

50歳過ぎて、生活習慣病克服のために始めた自転車にずっぽりとはまったSF作家としてあまりにも有名ですな。
氏の体験を元に、自転車の魅力を紹介した本。無駄なく詳しく、入門書として最適だと思います。
特に第1章、第5章は秀逸。
まっとうな自転車愛好家の頭を悩ませているバカみたいな問題「自転車はどこを走るか」について、自民党国会議員・小杉隆氏(引退)が朝日新聞に投稿した論文をはじめたくさんの方が警鐘を鳴らしておられますが、第1章に健康との関わりをはじめ詳しく紹介されています。
第5章の後半には自転車に関わる法令集と解説が収められています。警察官、学校の先生ら子供たちを指導する立場の方の教科書にもなりそうな気がします。
 
自転車で痩せた人(2006) 高千穂遙(1951〜)
NHK出版生活人新書
ISBN4-14-088178-X
  2011/2/26

ロードレースを舞台にしたミステリー小説。第10回大藪春彦賞(徳間書店:2008)を受賞して注目を浴びました。
アパートのエレベーターが自転車持ち込み禁止なので階段を抱えて上がる、何て表現が何ともリアルで、作者もサイクリング愛好者か、と思ったら全くの素人だそうで。もちろんファンではあったようですが。レースや機材についても破綻がなくイライラせずに読めます。
ミステリーなので筋書きに触れるわけにはいきませんが、あっと驚く結末。
後で冷静になって考えれば、そんなことはあり得ないんだけれども、読んでいる間はそうしたことを全く感じさせないのは、ストーリーテラーとしての力量でしょうね。
多少、トーンが暗いのはこうした結末なのでやむを得ないかもしれません。いずれにせよ未読の方はぜひどうぞ。文庫版もあります。
サクリファイス(2007) 近藤史恵(1969〜)
新潮社
ISBN-10: 9784103052517
  2011/4/9

大変好評だった「サクリファイス」の続編。前作で初の海外遠征を果たした主人公がアシストとしての力量を認められ、ヨーロッパのプロチーム入り、ツール・ド・フランスに出場し、疑心暗鬼の世界に巻き込まれてしまいます。
前作よりも、作者の力量が明らかに上がっています。無理がなく、するりと読めてしまいます。これ、難しいんだから……。
前作で気になった暗さは払拭されて、全体のトーンが明るい。大変深刻なテーマを扱っているにもかかわらず、です。これも作者の力量でしょうね。
個人的には、こちらの方が好きですな。
エデン(2010) 近藤史恵(1969〜)
新潮社
ISBN
978-4-10-305252-4
  2011/4/9