健康と環境の追い風に乗って、広がる自転車人気。スポーツとしての道具として市民権を得るにしたがって、関連書籍も増えてきました。マニアックな読み物、自転車をテーマにした小説、漫画、私のように古い人間には予想だにしなかったメディアにも自転車、それもかなりマニアックな話が掲載される時代になりました。折に触れて「親父のつぶやき」で紹介させていただいてはおりますが、一度まとめてみてもよかんベェ、ということで自転車をテーマにした出版物を見かけるたんびに取り上げてみます。

 オタクのバイブル(笑)…(^^;)
冥府魔道の総本山、ニューサイクリング誌に取り上げられた、それはそれは濃いキャラクターの自転車の中から選び抜かれた32台を収録しています。
クルスルート(ここで、ろーどれーさーなどと言わないのです)からタンデム、キャンピングまでスポーツの道具かつ鑑賞にも堪えられる名品ばかりで、眺めているだけでも楽しいのですが、いかんせん、札付きのマニア(って言うか?)対象なので、読みこなすにはかなりの造詣が必要です。
「要はパーツの新旧を問わず、そのデザインの底に流れるイメージを嗅ぎ分けて、ものを見つめる目を養うことに集約されるが…(途中省略)…さり気なく、という言葉の重さを理解できない向きには、ヴィンテージ・パーツを単なるコレクションとして飾っている方が無難であり…」
云々。
「ウン、そーだ、その通りだ」と思わず頷いた貴方。もう立派にビョーキです。
(^^;)
どうやら絶版になっているようで、アマゾンでは古本が20Kというとんでもない値段が付いていました。フルカラーで再版してくれんかな。1冊買うけど。
魔物たち(1994) 新田眞志(1950〜)
アテネ書房
ISBN4-87152-188-5
2011/5/1

写真家としてヨーロッパのレースシーンに欠かせない日本人、砂田氏は、古いMASIをはじめ多くのロードレーサーを所有するエンスージャストとしても有名です。
彼がイタリアの有名な24の工房を訪ね、歴史や現況を紹介したもの。クラシックレースや自転車がらみの観光地の紹介もあり、読みやすい文章と相まってビギナーでも楽しめる一冊です。
この本が、最近のただ流行に乗って企画されたものとまったく違うのは、自身が足を運び本人の本音を聞き出していること。レース関係者みんなが認める実績とエンスーとしての深い知識と興味を持った著者だからできたと思います。ウーゴ・デ・ローザ曰く「なぜ俺がカンパニョーロしか使わないかというと、簡単に言えば義理だよ。云々」
(^^;)
仕事に直結する、ある意味誤解を招きかねない本音。なかなか引き出せんよなぁ。
ところで、この本の執筆時点から20年近く。イタリアの老舗メーカーもすっかり様変わりしているようです。個性豊かな職人オーナーが高齢でどんどんリタイヤ、代わってプロデューサーと称する仕掛け人が企画をし、どこかでモノを造ってそれぞれのブランドで売る、という手法がごく一般的になっています。この話をし出すと長くなるので別の機会に譲りますが、古き良きチクリ、最後の輝きを納めた貴重な資料で、あります。
イタリアの自転車工房(1994) 砂田弓弦(1961〜)
アテネ書房

ISBN4-87152-192-3
2011/5/8

いきなり「馬鹿がつくほど自転車にのめり込むようになると、まず十中八九出てくる現象がある」。何のことか、とゆーと「自転車が増える」現象について、なんですな。
全編、自転車の面白さにはまった人なら、いちいちうなずける話が延々と続きます。
途中から自転車を狂言回しに使ってクルマ、カメラ、鉄道と話が広がっていきますが、どうも自転車にはまる、ってのはこうしたメカメカしいものが好きでやたら凝り性、という人が多いような気がする。ま、人のことは言えませんがね。
ただ、著者も後書きで反省(?)されているように、筆が走るあまり、専門用語が突然飛び出してビギナーには意味不明、というところがなきにしもあらず。
まぁ、この本を書店で手に取るような人は、すでに自転車の魅力にとりつかれ始めているわけで、んなぁことは問題にならんの鴨試練がね。
(*^_^*)
一読を勧めます。
自転車依存症(2006) 白鳥和也(1960〜)
平凡社
ISBN978-4-582-83344-7
2011/5/28