持ち主に愛され、可愛がられていたバイクも長い年月のうちに壊れ、また、朽ちていきます。なかには良い持ち主に恵まれないままプロショップの隅で眠ったままのバイクもありましょう。
こうしたバイクのフレームが、何本か私のもとで復活の時を待っています。
狭い我が家にそうそうたくさんは置けないとは思いながら、何かの縁があっての邂逅です。ピカピカの新車時代、オーナーに愛されていたころの姿に少しでも戻してあげたい、と思っています。

インナーラグの形>2010/3/27
本邦初公開(ホントか? (^_^;))、MASIのインナーラグは写真のような形をしておりますです。
パイプを直線的にぶった切ったものではなく、アールがついています。パイプの内側に隠れて見えなくなるのに、わざわざ手の込んだことをしているのはちゃんと理由があるからです。
普通のラグでも、イタリアンカットは緩やかな曲線で、コンチネンタルカットは小さなアールの曲線を多用して複雑な形を作っています。どちらも優美なものですが、これは別にデザインだけを狙っているわけではない。曲線にすることによって応力を逃がしているんですな。そうでなければ、応力が集中するところが出来てしまい最悪、パイプが割れてしまう恐れがある、ということです。
インナーラグもまったく同じことですから、このような形になっているという次第。

差し替え>2010/4/10
差し替え作業は、まだ片付けも終わっていない作業場に据え付けられた治具で行われました。作業場は今では片付けがすんで、ついでにあちこちから貴重なフレーム材料も発掘されています。
(^_^;)
割れたダウンチューブを途中でぶった切り、ラグ部分をバーナーで熱してやるとロウが溶けてすっぽりと抜けます。
ラグの接合部分を丹念に磨いたのが、上の写真。今回は古いパイプに付いていた変速レバー台座も取り外して再利用しました。新しいのを使ってもいいんだけどね。
さらにボトル台座も取り付けた後、治具に固定してフレームにロウ付けします。パイプが0.1mm太いだけなのに、ロウをきちんと回すのが大変だったとのこと。

差し替えすんだら次は…>2010/5/8
ご覧の通り、無事にダウンチューブの差し替えに成功しました。ボトル台座も元通りになっています。ついでにシートステイやヘッド下部に点々と見受けられたロウ切れもきちんと埋めてもらいました。このころ以降のイタリアンMASIは、アルベルトの老眼が進んだせいかどうかしらんが、ちょくちょくこの手の欠陥が見受けられます。もちろん性能に関係するようなものではないけれども、ヒビが入ったように見えるんで、気になり出したらどうしようもありません。でも、これで大丈夫。ちなみにヘッド下部のロウ切れは袋小路になっているのでなかなか補修が難しいとのことですが、ちゃんとやってもらえました。
さて、パイプの修理が済めば、次は塗装。の、前にロゴの複製が必要です。実は割れが判明した直後、近所のステッカー専門店「切文字屋」にお願いして作ってもらっています。
ワンオフで既製の字体も使えず胴抜きなどという面倒なこともあって、ちょっと値段を言うのは、はばかるほどですが、それでも割に合わない仕事、だったらしい。(^^;)。 出来映えは素晴らしいです。寸分違わぬ、胴抜きの色までぴったりでした。九州の片田舎のショップですが、技術はすごいですね。