自転車の趣味にはまってしまった人なら、誰でも憧れるのがフルオーダーの自転車。体格、走力、趣味に合った自分だけの1台というのは何ものにも代え難い魅力です。昨今のクロモリブームで昔ながらの職人さんが誂えるオーダーフレームは大変な人気だそうで、ブランドによっては1年以上待たされることも当たり前、どころか受けてもらえたら幸運とまで言われています。
ともあれ、いつかは乗りたいオーダー自転車。それなりの金額を
はたくのですから「こんなはずじゃなかった」と後悔はしたくないものです。

工作編
ヘッドラグ・クラシックバイクのキモ>
ヘッドパイプと、トップ、ダウン両チューブを繋ぎ止めている部分がラグ。スチール系バイクでは、ここのデザインによって雰囲気がかなり変わります。
ラグの材質は、今ではほぼ100%ロスト・ワックス製法によるもの。精密できれいな地肌になるので、プレスや可鍛鋳鉄(マリエーブル)はほぼ使われなくなっています。
形状は、大きく分けてシンプルな三次曲線の「イタリアン」と複雑に曲線を組み合わせた装飾性の強い「コンチネンタル」があります。ちなみに曲線で構成されているのは応力を分散させ、破断しにくくするためだそうな。「イタリアン」はもちろんイタリアのロードレーサー等に広く使われていたから。一方の「コンチネンタル」は主にフランスのものが知られています。「ナベックス」(写真最下段の2つ)が有名ですね。
写真をご覧いただくとお分かりでしょうが、ラグ本体から伸びるヒゲを長くしたり、穴を開けたり。ラグ本体を思いっ切り削り込んでいるのもあります(これだけ削っても強度は問題ありません)。実に多彩で、どんなデザインにするか考えるのも楽しみのひとつです。まぁ実際にお願いするとそれなりの費用になる場合もありますが……。

2012/2/18

フォーククラウン・年代で変遷する形>
自転車の雰囲気を決める要素のひとつ、フォーククラウン。ここはただ単に装飾性だけでなく剛性にも関わってくるので用途などを十分に考えたいところです。
スチール系フォークはこのクラウンにロウ付けするものと、直接コラムに溶接する「ユニクラウン」とありますが、オーダーではほぼ100%フォーククラウンロウ付け。それも平ったい「フラット」、やや肩下がりの「エアロ」と肩が丸まった「ラウンド」状のものに分けられます。一番多いのはエアロでしょうが、これもブレードの上から被せるのか、中に差し込むのか、によっても雰囲気が変わる。肩の横部分のカットでも変わる。とにかく千差万別です。
ちなみに、エアロよりもフラットの方が若干強いらしい。またラウンドは重そうに見えますが、実は軽くてかなり強い。私のMASIアルミにこれが付いていますが重量わずか550g。ブレーズが独特の五角形断面をしているせいもあろうけれども、横剛性が大変強いのにしなやかなのは驚くばかり。究極のスチールフォークかもしれませんね。
オタク趣味の観点から見ると、年代で流行の形状が変化しています。70年代ごろまではフラット、80年代に入ってエアロ、90年代にラウンド形状のものが出てきています。その後はカーボンフォークに淘汰されましたが(^^;)。
オタクの匂いをプンプンさせたい人は、そのうちに紹介しようと思っているパーツとの年代をきちんと考えると、スノッブな雰囲気満点の一台ができあがり。「さすが」と感心されるか「ヘッ!」と鼻でせせら笑われるか、それは日頃のおこないと言うか人徳というか…。
ヘ(^^ヘ)(ノ^^)ノ

2012/2/25

シートステイ接合部・全体のフォルムに影響>
パイプ接合部の残る一か所がシートラグとステイの接合部。ここの造作は意外に全体のフォルムを左右しますな。
シートラグの横にステイ上部が取り付くのが一般的で、古くからある形。それが'80年代にエアロが流行してラグ後部にまとめた「集合ステイ」が増えてきます。
面白いことに、小さいフレームには集合ステイの方が全体がすっきり見えるんですね。このため小柄な人が多い日本では結構これを見かけます。大柄なフレームだとちょっと華奢に見えるので、ラグ横に取り付けた方が力強く見える。強度的には多分、横に付けた方が強いのだろうが、まぁ素人が分かるレベルではありませんな。
またステイの蓋部分に刻印を入れたりめっきをしたり、集合ステイにしても真後ろから付けたり、ラグでなくピン部分に付けたり実にバリエーションが豊富で、見飽きない。ここも遊べる部分です。

2012/3/3