自転車の趣味にはまってしまった人なら、誰でも憧れるのがフルオーダーの自転車。体格、走力、趣味に合った自分だけの1台というのは何ものにも代え難い魅力です。昨今のクロモリブームで昔ながらの職人さんが誂えるオーダーフレームは大変な人気だそうで、ブランドによっては1年以上待たされることも当たり前、どころか受けてもらえたら幸運とまで言われています。
ともあれ、いつかは乗りたいオーダー自転車。それなりの金額を
はたくのですから「こんなはずじゃなかった」と後悔はしたくないものです。

ワイヤリング・中か外か、下か上か>
ロードバイクにはブレーキ、変速計4本のワイヤを取り回さねばなりません。フロントブレーキワイヤはバーから直接下に降りるのでいいけれど、他の3本はどっかのパイプに這わせて保持することになります。
変速ワイヤ
ロードバイクはシフトレバーからダウンチューブに沿って取り回します。その際、BBの「上か下か」ってのがありましてね。
古い時代は大抵上。写真上の段 左から2枚目ね。まだレースコースでもグラベルが珍しくなかったころ、下回しだと小石を撥ねたり泥が詰まったりでトラブルの元になる、ってんで上に回して予防したのが始まり。時代が下がってくると、そういう心配が少なくなったし、プラスチックが出回るとこれでガイドを造ると抵抗が少なくてよろしい。BBに火を入れずに済むし軽いし。さらにこうするとパイプとワイヤが平行になって見た目がスマート、というおまけがついた。ということで、今では上回しは絶滅危惧種ですな。
リアブレーキワイヤ
リアブレーキは通常、トップチューブに取り回します。古くはバンドで止めておったね。写真下の段 右のように。これが'70年ごろからパイプにダボをロウ付けして止めるようになります。アウターワイヤがない部分がかなりできるので、引きが軽くなるし重量的にも有利、ってことでしょう。パイプ上を通したり、下にしたり。それがエアロブームが来て、ワイヤをトップチューブに内蔵する工作が流行します。下の段 左の2枚のように。シートチューブ側つまり後ろはワイヤが上から出ますが、ヘッドチューブ側は下から入ったり、上から入れたり。どっちもあり。
まぁ どこをどう取り回そうが、性能的には大差なし。自分の好みで自由にすればいいのではないでしょうか。

2012/3/17

小物の工作・普通はお任せするが…>
フレームの工作について延々と駄法螺を吹いてきましたが、この他にもこだわることが出来る場所がいくつかあります。
まずリアブレーキが取り付くシートステイブリッジ。かつてはブレーキシャフトを止めていたのが普通の六角ナットだったので、あんまり凝ったものはなかったのですが、今では埋め込み式になったのが、遊び心を刺激するのでしょうか。ちょっと見ただけでいろいろな形がありまっせ。もちろん性能的にどうこうということは全くなく、好きにしてよろしい。
次にステイ類のつぶし。有名なのがデ・ローザの菱形につぶしたチェンステイ。写真をご覧あれ。これはリアが確実に硬くなります。重量級でトルクフルな方は、やっても面白いのではないか。
同じ写真に、BBが写っています。良く見るとフィンで補強しているのが分かります。これもデ・ローザ特有のどっしりとした硬さが生まれる理由のひとつですね。あーゆーのが好きな方はラグ回りを同様に補強するとかなり硬くできます。
もひとつ、写真を撮ってもまず分からないのだけれども、両端を絞った「ダブルテーパー」と呼ばれるシートステイを使うと、大きいフレームの場合、軽快に見えます。これはパイプそのものの供給があるかどうか、という問題がありますが。


パーツ編
ステム:フォルムを決める影の支配者>
スポーツバイク、ぱっと見で目がいくのはたいていの人がチェンホイールでしょうか。派手なエアロホイールを履いていればそっちかも知れない。でも全体のフォルムには関係ない。
「格好いい」「ダサイ(死語?)」を決めているのは、実はステムだと思う。クイルステムしかなかった時代は、デザインが違う、っても大同小異。好きに選んで問題はなかったけれども、アヘッドが当たり前になった昨今では、角度も太さもまちまち。選び間違うと妙にちぐはぐなバイクになってしまいます。
要諦はトップチューブとなるたけ平行に見えること。さらに太さと長さに違和感がないこと。ホリゾンタルフレームしかなかった時代のクイルステムが72°前後だ、というのはここから来ています。
アヘッドが80°や90°が多い、というのは最近はスローピングフレームが主流だから。
オーダーする段階でクイルにする、と決めれば余り悩む必要なし。太さもスチール系パイプに合うものばかりだし、オーダーだから長さについても、見た目の良い範囲に収まるように各部の寸法を出してもらえます。
もしアヘッドを使いたいなら、この辺を良く見極めて部品を選びましょう。スローピングにした方がいいかもしれない。
脱線するけど、完成車選びでも同じこと。細身のホリゾンタルフレームに上向きのオーバーサイズのぶっといアヘッドステムを付けて、「クロモリがカッコいい」なんて宣伝しているメーカーやショップもありますな。フォルムがチグハグで実にカッコ悪い、とは思わないんでしょうね。
こーゆーところは信用しないことにしています。そういうデリカシーのないところが扱う商品、どうせ他の部分も神経が行き届いていないに決まってるので。(^_^;)
2012/8/11