新しいパーツやメーカーの噂、非力なローディーの試乗記、複雑怪奇なパーツの互換性をクリアする方法etc・・・。自転車雑誌やプロショップでは相手にされないお話を集めてみました。随時更新します。
 ただし、あくまで「噂」と「裏技」です。眉にツバを付けてお読みください。安全のためには「裏技」はお試しにならないほうがよいか、と(^^;) 思います。
(2011/12)

<自転車と社会:1>2011/12/3
自転車を見る社会の目が変わりつつあります。健康と環境に優しく、おそらくは長引く不況(ガソリンの高騰)にも後押しをされて広がった自転車ブーム。様々な問題を引き起こしています。もはや一部愛好家の趣味、では通らない時代になりました。自転車を取り巻く環境と問題を考えてみることにしました。
進む厳罰化
2011年10月26日。新聞各紙は、自転車の取り締まりに関する警察庁の新たな指針について大きく報道しました。
これについては後で詳しく説明するとして。近年、自転車に関するニュース、それも「負」の面が取り上げられることが増えています。それだけ世間の目が厳しくなり、事故や違反の摘発も急増し厳しく処罰される傾向が強くなっています。
2011年10月、公道をノーブレーキピストで走った20代の男性が大阪簡裁で罰金6000円の罰金刑を受けました。従来、ノーブレーキピストで摘発を受けても、不起訴処分になるのが通例でしたが検察庁は原則として起訴する方針です。
2011年11月、大阪市で国道を自転車で横切り、これをよけようとした車に歩行者2人がはねられて死亡した事故について、大阪地裁は自転車に乗っていた男性に重過失致死罪で禁錮2年の判決を言い渡しています。
同月、大分でも、自転車で歩道を走り歩行者に衝突して重傷を負わせた男性が、重過失傷害罪で大分地裁に起訴されました。
今後、この傾向は加速することはあれ、弱まることはないでしょう。自転車に乗る人の自覚が問われている、と思います。

<自転車と社会:2>2011/12/3
高騰する賠償金
人身事故を起こすと、刑事裁判で罪に問われるのと平行して損害賠償請求の民事訴訟も起こされます。こちらも厳しい判決が目立ちます。
大阪地裁で無灯火の自転車で男性をはねて死亡させた中学生に請求通り3000万円の賠償命令。
東京地裁では、信号無視の自転車で歩行中の女性にぶつかり死亡させた男に5400万円の支払いを命じた判決。
福岡地裁でも、自転車と衝突したオートバイの男性が転倒して死亡した事故で、自転車の男らに3800万円の損害賠償請求訴訟が起こされ、1000万円支払いで和解しています。ちなみに自転車の男は重過失致死罪で起訴、禁錮1年(執行猶予3年)の判決を受けています。
自転車に乗る、ということは社会的にも責任を取らなければならない、という当たり前のことがようやく浸透してきた、ということでしょうか。

再生産はうれしいけれど…>2011/12/6
最近のクロモリブームの恩恵で(シングルギアブームの恩恵も多少あるのだけれども)ここ10年、大変手に入れにくかったクイル型ステムやクラシックなハンドルバーをチネリが再生産して国内にも入っています。
バーは70年代から90年代にかけての定番、浅曲がりのジロ・デ・イタリアと深曲がりのクリテリウム。ステムは人気ナンバー・ワンの1A。それぞれ約8000円ですから値段もまぁ妥当。
ちょっと前まで「もう二度と手に入らん」と、探しまくってそれぞれふたケタ前後を買い集めたどっかの誰かσ(^^;)の立場は、どーしてくれるんじゃい! とゆーことはおいといても、最近フライトも再生産されたし、これはこれでうれしい限り。
でも「古い金型、よー残しとったね」という話になってちょっと暗い気持ちになりました。
日本では自転車に限らず古いパーツの純正品再生産って、まず見ない。生産に欠かせない金型を捨てるから。理由は税金がかかるから。固定資産税の対象となるので使いもしない金型を後生大事に抱えている企業なぞない、ってことですね。つくづく物作りに優しくない国だなぁと思う。
イタリアの税制がどうなっているかは勉強不足で知りませんが、少なくとも企業が金型をとっておく、という選択ができるぐらいに社会が成熟しているか、もしくは企業体力があるか、古いものを大事にする文化が根付いているか、でしょうね。

<自転車と社会:3>2011/12/10
法律は変わっていない
2011年10月26日付の朝刊に大きく報じられた警察庁の自転車関係の方針変更は、ひとことで言えば「自転車の車道走行を徹底する」というものです。
実は2008年6月の道路交通法改正で、それまで自転車歩道走行黙認だったのが「歩道を走っても良いのは13歳未満と70歳以上。身障者、工事中などやむを得ない場合」とはっきりうたわれています。もっと遡れば1960年に道路交通法が成立した当初から「自転車は軽車両であって車道の左側(なんだよバカ高校生ども)通行する」とちゃぁんと決まっておる。
法律的には何ら変わっているわけではありませんな。
つまりこれまでも歩道走行の自転車を、道交法違反で摘発することは可能だったわけで「自転車は歩道を走って良い」というのは大きな大間違い。
これまで捕まらなかったのは、ただ単にお巡りさんが面倒くさかっただけ、なのです。
歩道を走る自転車の無法ぶりがあまりにひどく、歩道で死亡事故さえ起きている。貴方のおふくろや可愛い盛りの孫が、安全なはずの歩道ではね殺されたら、どう思う? 
取り締まられるのは当たり前です。一部には「車道を走ると危険」として反対する声が警察庁に寄せられているとの報道もありました。どっかおかしくないか?

<自転車と社会:4>2011/12/10
どこで狂った自転車行政
本来が車道を走るべき自転車が、歩道で歩行者を蹴散らして走るようになったのはなぜか。これを知るためには日本の交通行政の経緯を見なければなりません。
最初の分岐点が1970年。
マイカーブームの到来「モータリゼーション」という言葉が生まれた高度成長期の、ある意味ピークでした。この年の交通事故による死亡者は16,765人で史上最悪。「交通戦争」とまで呼ばれました。
増え続ける自動車をスムーズに流すため、「自転車通行可」の交通標識を新設し一部歩道通行を許します。
実際はこのころから「自転車は歩道を走れ!」とお巡りさんが言っていたようです。ご承知の通り、現場が勝手にどうこうできる業界ではないので、このころから自転車を歩道に上げる、というお上のお達しが出ていたと考える方が普通でしょう。
次の節目は1978年。
道路交通法がさらに改正され、長さ1.9m、幅60cmに収まる自転車を「普通自転車」と定義し、これに限って歩道通行を徐行することを認めました。この時の国会答弁などを見ると、歩道上での速度を歩行者と同等(4,5km/h)かやや速い程度(7,8km/h)と見ており、主に買い物や幼児を乗せた主婦を念頭に置いていたことがわかります。横道にそれますが、この時、警察だか通産だかの指導で生まれたのがいわゆるママチャリ。これなら速く走れないだろう、と考えたそうだ。ホントにそう考えていたのなら●◎だね。ヘ(^^ヘ)(ノ^^)ノ
さらに当時の警察庁交通局長は国会で「歩道の上に自転車を上げなきゃならんというのは道路のまさに日本的な欠陥」と答弁しており、危険性は十分に認識しているものの、ある意味、自動車ロビーの圧力に屈した結果、という見方もできます。
要は劣悪な道路環境のもと、社会がいかに車を流すかにとらわれて自転車は邪魔者扱いされてきた、ということ。その後も交通、道路行政とも、いっこうに根本的な解決策に取り組もうとしませんでした。実に30年間放置されたツケが現在の状況、というわけです。

と。このシリーズ、始めたはいいが長くなりそうだな… (-_-)