藤沢宿。義経の首洗井戸を見て相模川(馬入橋)をわたると平塚宿である。ちょうどこの日は武宮正樹、林海峯などが集まって囲碁の路上対決をしていた。「以後宜しく」と人混みを抜けていく。右手に見えるのが高麗山(こまさん)である。広重の浮世絵通り、可愛い山である。可愛い女性をすけこまさん、という訳か。
大急ぎで大磯宿へ。このあたりかの有名な湘南海岸だ。サザンはチューブはどこだ?ここだよサドルバッグの中。違うか。
湘南海岸ゆっくり見てみたい。えっ時間がない? ああしょうなんですね。はいわかりました。
そして小田原宿。やっと小田原。本来はここで昼食の予定だったがもう午後3時。これはもう大惨事である。名物のかまぼこと外郎(ういろう)を買い込む。さてこれから箱根の上り東海道一の難所である。
三枚橋から旧道に入る。そう、私は求道者である。途中、箱根寄せ木細工を買い(なぜか3つも…)有名な七曲り坂をすいすいとこなしていく。箱根駅伝の実況中継が聞こえてきそうだ。甘酒茶屋でひと休み、糖分を補給する。これでとうぶん大丈夫だろう。
なおも上って芦ノ湖へ。やっと芦ノ湖。しかし宿はここからさらに10km先にアルカイダ。もうかなり暗い。皆黙々と湖畔の上りをこなしていく。まだ私の足は残っているぞ。そう脚残(あしのこ)なんちゃって。
下らないことを考えているうち、やっと宿に到着。すぐ食事という。お給仕の(元)お姉さんはやたらと威勢が良い。聞くと博多出身とのこと。ごりょんさん。こんなところで博多弁が通じるとは。温泉に浸かってやっと人心地付く。そして宴会。まぁ何とかたどり着けた。まあいいではないか。これが旅、これがサイクリング、これが人生。

10月10日(祝)2日目(箱根〜府中=の予定が…)
宿の朝食が遅かったこともあり、今朝はゆっくりして箱根の関所を見学。そこはおやじ8人組、ついつい時間を食ってしまう。ここから少し上ると箱根峠(846m)である。その後豪快な下り、途中石畳の旧街道を見て臼転坂(うすころばしざか)を下る。ここは約30%の下り。臼が転がり落ちるような坂である。
下った所が三島宿。三島大社にお参りした。先を急ぐ旅だけれども、このあと無理を言って、やや強引に(強引愚マイウエイ)、一か所だけ寄り道をする。柿田川である。どこまでも清く群青色に澄み切った流れに川藻が揺らぎ、サラサラした砂底からこんこんと水が湧いてくる様子が見て取れる。よかった。ここに来て良かった。生きてきて良かった。心の中まで洗われるようだ。実は、今回の旅で私が一番来たかった場所なのだ。
柿田川
揺らぐ川藻の
群青(あお)き水
洗い流して
心のあくも

さあ、先を急いで沼津宿へ。途中、平作地蔵尊へ。日本三大仇討ちのひとつといわれる「鍵屋の辻の決闘」ゆかりの地である。三大仇討ちのあと二つは忠臣蔵と曾我兄弟。忠臣蔵は泉岳寺にお参りした。残る曾我兄弟ゆかりの潮音寺もすぐ近くにあったのだが、さすがに立ち寄るとは言い出せなかった。少しだけ悔いが残る、ということで3分の2達成。
沼津宿も商店街の中に本陣がある。この後、旧道に入り原宿へ。本陣がなかなか見つからんぞ。そうだ竹の子族に尋ねてみようか。
田子の浦あたりは大きな工場群がある。ああこれが美しい田子の浦にヘドロを垂れ流した某日本製紙だ。バカヤロー。吉原宿では本陣を確認し通過する。
富士川を渡る。聞きしにまさる急流である。ちょうど橋の上から富士山が見える。山川富士子(山本、だろ!)状態である。なんと贅沢な風景。しばし見とれる。だがもう時間がない。蒲原宿までは旧道をパスして新道を進む。残念であるが仕方がない。旅では臨機応変な対応が時には必要である。蒲原宿は昔日の面影がよく残っている。
特に是非みたいと思っていた五十嵐歯科医院の建物には感動した。

次の由比宿はすぐ。由井正雪の紺屋、中を覗いたが白袴は置いていない。広重美術館も時間がないのでパス。またこの宿はサクラエビのかき揚げが名物だ。楽しみにしていたのだがこれ以上強引には言えなかった。言えなき子である。パス。残念。福岡に帰ってからサクラエビを食べている夢を見た。くよくよするな若者よ(おじさんだろ?)
このあとすぐに東海道随一の景勝地、薩タ峠(タは土偏に垂)である。モンテ・ゾンコランもかくやという激坂を上ると見えた!広重の浮世絵通りの風景である。
なだらかに弧を描く駿河湾、富士山頂もくっきり見える。季節柄、冠雪はしていないが直接見ているのである。この景色のおかげでサクラエビの恨みもいつの間にか霧散していた。
揚げ海老の
恨みも去った
峠道
見晴るかす富士
駿河の海辺

そして興津宿。清見寺という古刹、道路から眺めるだけだったが立派な寺だ。そのまま国道1号線を西へ。江尻宿である。江尻宿は清水市にある。次郎長とサッカーで有名だ。ところが本陣がなかなか見つからない。無理もない。小さなプレートが探していたあたりの足元にあったらしい。
さあ次は最後の府中宿。というところで時間切れ。草薙神社参りも次回に回す。やはり手ごわかった。だってくさなぎつよし、というでしょう。
輪行、タクシーを乗り継いで静岡空港へ。何とか滑り込みセーフ。政府高官であった。

To be continued…