イモの来た道・3
サツマイモの原産地は、南米ペルーあたりというのが定説です。ペルー・チルカ谷遺跡からは紀元前1万年ほどのサツマイモの根が出土しているのだそうな。
これがどうやって世界に広まったか。コロンブスのアメリカ大陸発見(1492)を機に、サツマイモをスペインに持ち帰ったのが最初の伝播、というのが当時からの常識でした。これが覆ったのは何と、戦後になって。ポリネシアのタヒチ、ニュージーランドなどでクマラという名で栽培されているイモがサツマイモと判明。おまけにペルーなどの原住民もサツマイモをやはり「クマラ」と呼んでいたことまで明らかになり、植物学者の間に大きな衝撃が走ります。
この太平洋伝播ルートを証明したのが、ノルウェーの民族学者トール・ヘイエルダール(1914〜2002)のコン・チキ号による漂流実験でした。筏に乗ったインディオたちは何を求めて大航海に乗り出したのでしょうね。

閑話休題。
平地が多く温暖で日照の長い種子島は、良質のサツマイモの産地です。久耀は、自社栽培のイモと地下300mから汲み上げる地下水で仕込んだうえに、6年寝かせた古酒をブレンドした高級品。
種子島の焼酎らしい柔らかな味わいと大変に滑らかなのど越しを持つうまい酒です。南泉やまだご紹介していない●●(そのうちに出てきます)など種子島の焼酎はどれも大変おいしいですよ。知らないブランドでもぜひお試しください。
久耀 種子島酒造株式会社(鹿児島県西之表市西之表13589番地3)
2009/3/28

屋久島西部の山、愛子岳(1235m)にちなんで命名された屋久島の焼酎。地場の酒屋のプライベートブランドとして1999年に売り出したところ、2001年の愛子(愛子内親王=敬宮)さま誕生で、一躍全国区、レアもの焼酎の仲間入り。
三岳と同じ蔵の焼酎ですが、三岳よりも軽く滑らかなのど越し。うまいけれども大変飲みやすく仕上がっています。三岳は常圧で蒸留するのに対して、愛子は減圧蒸留とのこと。これが味の差になっているのでしょう。
焼酎を造るには、発酵した醪を蒸留してアルコール分を抽出しなければなりません。アルコールの沸点は約78度。大体90度ぐらいにして抽出するそうです。これが常圧蒸留。これに対して蒸留器内の空気を抜き、沸点を下げて40〜50度の低温で抽出するのが減圧蒸留です。
抽出する温度が高いほど、原料に含まれる様々な成分が気化して抽出されやすくなりますから、常圧と減圧を比べれば、一般的には、常圧の方がこくのある焼酎になりやすいといわれています。
もちろんこれだけではなく、蒸留器の形や材質(ステンレスだけでなく木製のものもある)、時間などさまざまな要因が絡まって焼酎の個性が生まれます。
蒸留器の肩の部分や冷却槽に橋渡しをする管(ツルクビ)の形状でも味わいが変わるのだそうです。いや、奥が深い。
愛子 三岳酒造株式会社(鹿児島県熊毛郡屋久町安房2625番地19)
2009/4/11

薩摩半島西側に浮かぶ甑島北部の焼酎。口当たりは軽いけれど、しっかりしたうまみがさらりと残る上品な焼酎です。創業は天保年間(1830-1844)といいますから、かなり古い蔵の部類に入ります。
六代目の御当主は、タンクの表面に浮く油分をネルで丹念に掬い取って熟成発酵させるのだとか。これが雑味の少ないすっきりした味を生むひとつの理由になっています。
ところで、芋焼酎の原材料には普通、黄金千貫を使います。農林省九州農業試験場で育成、1966年登録された大型で育ちが早く、きめ細かくでんぷん歩留まりが大変良い品種です。
対して、ここはシロサツマを使っているといいます。こちらは農業研究センター(茨城県つくば市)の農水省農業研究センター育ちで1986年生まれのまだまだ若い品種です。島の風土に合っている、ということでこちらを選んでいるようですが、こうしたこだわりも上品な味に繋がるのでしょう。
六代目百合 塩田酒造株式会社(鹿児島県薩摩川内市里町里1604)
2009/4/25