宮崎県南部、小林市の小さな蔵の焼酎。
ちょっと前に、ここの蔵の焼酎を紹介しました。ラベルはおどろおどろしいが飲んでみると実に鮮やかな軽やかなしっかりした焼酎「山猪」でしたか。
あちらは白麹で醸しているのに対し、これは黒麹。確かに。同じく香りも良くきれいに甘いのだけれども、山猪の甘さに比べると、これは条件によってすばらしく甘くなるけれども少し条件が悪いと、かたくなな甘さになる。この傾向、黒麹のうまい焼酎にしばしばあるような気がしますが……。思い過ごしか?
ところでこの蔵、ここ何年かで名前が売れてきた印象が強い、ある方から内輪話を聞いて納得しましたが、この話はまた何かの機会に譲りましょう。
ところで蔵のある「須木」は、霧島連山の山合、風の通り道なんだそうな。杜氏は風の具合を見計らって、適度な風が蔵に入るよう門を開け閉めするのが欠かせない仕事のひとつ、ということで「風の番人」という命名になったとか。
しゃれたネーミング、ですな。
風の番人 すき酒造株式会社(宮崎県小林市須木下田1270)
2012/4/24

焼酎メーカー向けの原料(サツマイモのことね)卸だった会社が、自社で良質な焼酎を造りたいと、1990年に設立した酒造会社。地元の蔵との合併の形を取ったと記憶していますが。
そこの標準酒ですが、甘味が強くコクがあります。大隅半島の焼酎は薩摩半島の製品に比べると軽い味わいの印象が強いのだけれど、これはちょっと雰囲気が違うかもしれない。甘味の元のひとつが水、志布志は特に湧水が多いことで知られているのだけれども、特に「御前の水」と呼ばれる非常に湧出量が多く、甘味の強い水を使っているのだそうな。
志布志の焼酎と言えば、蓬之露千亀女を紹介しているけれどどれも非常にレベルが高い。派手に宣伝する企業体力がないから地元消費が中心だけれども、うまい焼酎揃いです。
蔵の名前は「おおくぼ」です。
華奴 太久保酒造株式会社(鹿児島県志布志市松山町尾野見1319-83 )
2012/5/5

近年の酒造技術は驚くほど進んでいて、味は言うに及ばず吟醸香までかなりのコントロールが出来るのだとか。大メーカーが、味わいが微妙に違う様々な銘柄を出しているのは設備投資をするだけの余裕があるから。
本坊酒造は、鹿児島県の焼酎メーカー最大手のひとつ。そこが「芋焼酎本来の味わいを大切にするため」余計なことをせずに、造った限定焼酎。
「余計なこと」のひとつとして、濾過があります。すっきりと飲みやすく、また長持ちさせるためには濾過をした方が良いので、大量生産品は大抵濾過して不純物を取り除いています。ただ不純物は「うまみ」「コク」「味わい」と裏表なので、濾過しないに済むに越したことはない。
飲んでみると、甘味が濃くてとげとげしさのない柔らかいボディなのに非常にすっきりとした飲み口に仕上がってます。実に上品な焼酎です。
ひと冬にタンク1杯分だけの生産という貴重品、見つけたらぜひ飲んでみて下さい。
にごり成分を含む焼酎は直射日光に弱いので、茶色の紙で覆っています。飲み終わるまで剥がない方がいいですよ。
さつまおはら にごり 本坊酒造株式会社(鹿児島市南栄3−27)
2012/5/26