日本酒は新酒で味わうのが一般的で、個人的には香りと味のバランスを楽しめるのは、瓶詰めから3か月ぐらいまでと感じております。が、ひと夏超えたのを好む人もいらっしゃって、これは相当な飲んべえであります。下手な保管だといわゆる「ひね香」が出て臭いし、独特の舌を刺すエグさを感じて飲めたものではない。
ところが上手に貯蔵していると、上等な紹興酒をさらに洗練させたような独特の風味が出てきます。
大分県北部は国東半島の酒蔵「西の関」は、大変に甘く濃い酒を造ることで知られています。ところが23年前、なぜか一部のタンクでやたらと辛い酒ができたんだそうな。西の関のイメージとあまりにかけ離れているため、売らないことにして貯蔵したそうです。どう使うかが決まらないまま、延々と寝かされ続け(ただ忘れとっただけじゃなかろーか)、最近になって実にきれいな酒になっていることがわかりようやく日の目を見たというわけ。
「超辛口」とありますが、それは西の関基準であって一般的にはそう驚くことはない。紹興酒を上品にしたようなまろやかさの奥にアミノ酸たっぷりののど越しで出自は隠せませんな。そうそう、飲む前に写真を撮っておけばよいものを飲み干してしまいました。淡い琥珀色がたいへんきれいですよ。超限定品(当たり前だね)
西の関超辛口 萱島酒造有限会社(大分県国東市国東町綱井392-1)
2013/3/2

甘味の強い新品種「アマサツマ」を原料にした焼酎。
聞き慣れない品種なので検索すると農水省のホームページにありましたね。甘くて焼き芋などによく使われる「ベニアズマ」と「九州30号」なる品種を掛け合わせて生まれたそうな。登録が2005年というから大変新しい品種ですな。低い温度で成分のデンプンの糊化が始まり、結果、麦芽糖が多くできるために甘くなるとか。電子レンジでも石焼き芋のおいしさが味わえる、と。そう聞くと風情も何もありませんな。
それはともかく、甘い、です。それも普通は甘味を強く感じる焼酎は、重たいことが多いのだけれども、軽く爽やかな味わい。これを両立させておるのはすごいことです。
今はどんなんでもできるんですな。薩摩酒造の銘柄はこれで8つ目。それぞれに個性があって質の高い焼酎ばかり。大手メーカーの開発力は素晴らしい。
甘薩摩 薩摩酒造株式会社(枕崎市立神本町26番地)
2013/3/9

鹿児島から南へざっと400km 南海の楽園、奄美地方特産の酒が黒糖焼酎です。
その名の通り、主原料はサトウキビ。イモ焼酎のような独特のクセや匂いが薄いので、焼酎に慣れない人でも大丈夫だと思う。
このメーカーは、平成3年(1991)に古い蔵を継承して奄美本島北部で生まれた新しい蔵。それまで黒糖焼酎といえば30度が当たり前だったのを芋、麦、米焼酎と同じ25度にして売り出したところ全国的に認知されるきっかけを造りました。
口に含むと黒砂糖の香りと甘味がほのかに広がります。口当たりが良いのでロックにして飲んだら焼酎、という感じはしないでしょうね。お勧めは水割りか湯割りですが。
ところで、サトウキビで作った酒の代表格ラムとどう違うんじゃい? 実はほぼ同じでしてな。違いはラムでは使わない米麹を使って仕込むことだけ。最初に「特産」って書いたけど、酒税法でサトウキビを原料とした「焼酎」は奄美だけに認められているんですな。他の地方で作ったら「スピリッツ」になります。
長くなるので、その辺はまた今度。(^^)/
里の曙 町田酒造株式会社(大島郡龍郷町大勝3321)
2013/4/6