NAMBEIを買いに

拙HPに数々のコンテンツを提供していただいている名古屋在住のNさんが2012年末、遠路はるばる福岡を訪れてNAMBEIピストラーダをオーダーされました。2013年2月に完成し納車されましたが、この間の経緯や南米商会でのやりとりの様子などを文章にして下さいました。ベテランらしくなかなか深く鋭い洞察が随所にみられます。ディープな愛好家だけでなく、まだ冥府魔道に染まっていない方にも参考になることが多いと思います。ぜひお読み下さい。

南米商会で
社長さん(編注:先代です)、店長さん(編注:麹さん)、薙野さんが迎えてくださいました。最近は工房においでになることが多いという社長さんも待っていて下さいました。ご挨拶を済ませ、心ばかりの物をお渡しして、早速薙野さんに2台のピストラーダを診ていただきました。少し走って帰ってみえた薙野さんは、開口一番
「身長はどのくらいですか?」
「最近少し縮んで173cmです。」と答えると、
「これは180cm以上ある人のポジションです。固定ギヤはクランクが返ってくるから、これでも何とか廻せていたんでしょう。」と…。「サドルが尾てい骨に当たって痛いので、それを避けようと少しずつサドルを上げて行ったんです。ムーツのシートピラーを使いサドルを目一杯引いているのも、痛みを避けるためです。」
「お尻の痛みはサドルが合っていないためで、Nさんのやり方では解決しません。○ィ○ー○なんかが良いんじゃないかな…」
というやり取りの後、サドルを3cmほど下げてもらいました。当然ステムも。ムーツのピラーは湾曲しているので、湾曲部以下には下げることができません。でも薙野さんはもう少し下げたかったようです。
「これで少し乗ってみてきてください。」と言われ、近くを走ってみました。いやぁ、驚きました。だって『自分の自転車がいきなり自分の自転車になった』んだから…。2台のピストラーダは確かに『僕の所有物』でしたが、本当は『僕の物』ではなかった。薙野さんによって『僕の所有物』だったものが、真の意味で『僕の物』になりました。これまで25年自転車に乗ってきましたが、この25年は一体何だったんでしょう。つくづく南米商会さんのお客さんは幸せだと思いました。
その後、ローラー台の上で自転車を漕ぎながら、ポジションその他を診ていただきました。
社長さんは、
「薙野、チェーンの音はこんなものか?」とギヤ鳴りが大きいことを指摘。
「だいぶ大きいです。」と薙野さん。
「リヤコグとチェーンは持ってきました。ハブのグリスアップ、BBのグリスアップなどもお願いしたいんですが。」と僕。快く僕の依頼を受けてもらいました。
誤字さんにも僕のピストラーダを試乗していただきました。
――MASIは、デダチャイのパイプ。しなやかながらバネ感も適度に残した絶妙の乗り味は、ロードで馴染みがありましたが、スピードが乗り始めると後ろから押されるように進んでいく直結シングル独特のフィーリングがとても楽しい。Nさんがはまってしまったのもよく分かります。一方のセブンは、独特の重硬いフィーリングで、どっしりと進む。
http://godzzi.net/rumor-65.html――
と『自転車三昧』の中で表現されておられます。

本題のオーダー
さて本題のオーダーです。あれこれ僕の希望を書いた紙を読んでおられた社長さんが、
「『NAMBEIのスタンダードフレームのピストラーダ版』というのは、言いえて妙ですね。」と言われました。パイプについても、
「ただ淡々と乗るだけなら○○で良いけど、ちょっと駆けてみたい(スプリントしてみたいという意味だと思います)なら、△△の方が良い」とか、素人相手にいろいろアドバイスして下さいました。
薙野さんに持参したパーツを点検してもらいました。カンパ・レコード・パヴェのリムを見て、
「このリムは切断してもそのままの形で残っている」と言われても、何のことやら…。要するにこの時代のカンパのリムには残留応力がないということらしく、残留応力なくリムの形にすることが如何に難しいかを説明してもらいました。普通のリムは切断すると、ピーンと跳ねるんだそうです。知らんかった…。
「白(編注:シルバー)のブレーキアーチが手に入らないんで、不本意ながらシマノのDAを選びました」と言うと、誤字さんがやおら2階に上がって行かれました。降りてきたその手には、スケルトンになる前のコーラスのブレーキアーチが・・・。もう即決で「これにして下さい。」
DAのブレーキは最初ガツンと効いてくれるけど、それ以降は「ツーッ」と走ってしまう。一の矢は放てるけど、二の矢がない。そんな印象を僕は持っています。あくまで還暦オヤジの印象です…。
持参したイタリアンのBBは、今後のパーツの供給を考えると使用しない方が良いそうです。知識がないとこういう無駄が発生しますね。まぁ、そういう無駄が段ボールに何箱あるか…。

結局全てお任せすることにしました。3台のマージのオーダーの経験から、余り細かいことを言わずプロにお任せした方が、結果的には良いものができることは解っています。ナマイキにも「薙野さんに『俺の作った自転車はどやっ! スゴイだろう!! 踏み倒せるもんなら踏み倒してみぃ!!!』と言ってもらえる自転車が良いです。」とお願いしました。今から思うと、身の程知らずもいいとこ、誠に汗顔の至り…。
色は南米スタンダード・カラーのフランボヤンレッド、ロゴも南米スタンダードにしました。
この間、女房は社長さんとおしゃべり。娘さんの事、お孫さんの事などなど、社長さんの身辺調査に勤しんでおりました。これもいつもの事ではありますが、ご迷惑をかけたのではないかと恐縮しております。
他にお客さんもおいでになり、チェックインもまだ済ませていなかったので、このあたりでお暇することにしました。夕食をとるお店を訊いたところ、誤字さんがわざわざ予約を取ってくださいました。とても良いお店で、本当に感謝。
2013/3/26