Fixedの悦楽」「扉を開けたら」「イベントに出よう」と、多くの寄稿を寄せて下さる名古屋在のNさんは、大人の固定ギア愛好家ですが、ある老舗ショップにある旧いピストラーダに惚れ込み嫁にもらおうと画策します。が、甲羅を経た大旦那はそう簡単には首を縦に振りません。
そうこうするうちに、話は飛んで富士の樹海かアリババの洞窟か、ミノタウロスの迷宮か、最近の方にはなかなか理解できないであろうオタクの深い深い世界に沈んでいきますが・・・。はてさて、Nさんのもくろみは無事成就するのでありましょうか。
乞ご期待。
m(_ _)m

大旦那の日常
さて大旦那はヨダレを垂らしながら来店されるお客さんの相手ばかりしているわけではありません。普段はママチャリなどフツーの自転車のパンク修理など、細々とした修理を手がけておられます。
「そんな仕事は若い衆にやらせておけば良いのに…」と思われるでしょうが、それは短見というものです。こういうフツーの自転車はスポーツ自転車(以後ロードレーサーやマウンテンバイクを総称してこう呼びます)と違い、桁違いに材質や精度が悪い。フツーの自転車のハブを単体にして回してみるとわかりますが、グリースはもちろんベアリングも入っていないんじゃないかと思うほどゴリゴリ。実際幼児車のペダルにはベアリングも入っていないそうです。
またほとんどが「乗りっぱ」の「使いっぱ」(@浪人生の豚児)。チェーンは「赤イワシ」だし、タイヤにはろくに空気も入っていない。こういうフツーの自転車を若い衆に任せると、スポーツ自転車のつもりで修理をしてしまうから、時間がかかるわりには成果がでない。
若い衆だと次々に部品交換をしてしまうから、高いものについてしまいます。持ち込まれた自転車に合わせた修理、持ち込んだオーナーの懐具合に合わせた修理というのは、やっぱり功を経た大旦那でないといけないらしい。
豚児二人が延べ9年間、中学高校に通うのに使ったルイガノとジャイアントも、大旦那のお世話になりました。大旦那はいつも手を真っ黒にしながら、フツーの自転車のパンク修理や細々とした修理をしておられます。

しかし大旦那でないと出来ない仕事は、こればかりではありません。すでに絶滅危惧種になったランドナーやスポルティーフのオーナーは、「大旦那でなければ駄目」というお客さんばかり。
マッドガードの付いた自転車の組み立ては難しい。それはマッドガードの取り付け一つで、「ダサい」か「イケテル」かが決まってしまうからです。マッドガードがタイヤと干渉してはもちろんいけません。でもクリアランスが大き過ぎてタイヤとマッドガードの間から向こうの景色が見えるのも格好悪い。
さらにクリアランスが場所によって違っているのは、「そりゃあんまり」と言うものです。でも「そりゃあんまり」という自転車が多いのも事実です。さらにマッドガードはかなり大きなパーツですから、それを『亀甲』のものにするのか、『磨き』のものにするのか、あるいは『つや消し』のものにするのかで、自転車の雰囲気は大いに違ってきてしまう。
ブルーメルのプラガードを付けたランドナーなんて、想像するだけで気持ち悪い…。かといって亀甲ガードを付けたスポルティーフなんて見たくもない…。自転車の雰囲気に合わせるばかりでなく、オーナーの気質をも十分に読み込んで在庫の中から最適なものを選んでいくのは、やっぱり大旦那でなければできない仕事のようです。
大旦那は走る方も現役バリバリ。毎日のように三本ローラーでトレーニング。数年前からは、乗鞍のヒルクライムに若い衆が組んだ超軽量のサーベロで参加(大旦那は最新のパーツには疎いんです)。
また毎年のように海外に走りに行かれます。今年(2009年)はピナレロのフォンドに参加の予定だそうです。「本当はグランフォンドに参加したかったのに、65歳以上ということでフォンドにまわされた」と悔しがっておられます。
遠方からのお客さんのために言っておきますが、日曜や休日などの繁忙日にもかかわらず、「オジサンのコーナー」がクローズのことがあります。そういう時はたいていお客さんと、愛車のトーエイやサンジェでツーリングに行っておられます。
その翌日には溜まったパンク修理やフツーの自転車の修理に勤しんでおられますから、邪魔しないように・・・。
2009/9/22