Fixedの悦楽」「扉を開けたら」「イベントに出よう」と、多くの寄稿を寄せて下さる名古屋在のNさんは、大人の固定ギア愛好家ですが、ある老舗ショップにある旧いピストラーダに惚れ込み嫁にもらおうと画策します。が、甲羅を経た大旦那はそう簡単には首を縦に振りません。
そうこうするうちに、話は飛んで富士の樹海かアリババの洞窟か、ミノタウロスの迷宮か、最近の方にはなかなか理解できないであろうオタクの深い深い世界に沈んでいきますが・・・。はてさて、Nさんのもくろみは無事成就するのでありましょうか。
乞ご期待。
m(_ _)m

欲しい、欲しい、欲しい・・・・・
でもこういうときにあからさまに欲しい気持ちをあらわにしてはいけません。
先にも述べたように、これらの自転車は大旦那のコレクションでもあり、必ずしも売り物ではない。
それにこれまでの長い付き合いで、大旦那に「欲しい」というとなかなか「ウン」と言ってくれないのは分かっています。
「オジサン、これ売り物?!「オジサン、これいくら??!!」「オジサン、これ譲って!!!」という言葉を何とか飲み込んで、まずはじっくりと観察してみました。
自転車の顔ともいうべきチェーンホイールは、コッタードの鉄製のスリーアーム。
僕が中学の時に通学に使っていた自転車がコッタードでした。このタイプのクランクはコッターピンが緩むと、クランクが「ハの字」になってしまう。
そのくせ抜こうと思うと中々抜けず、往生したことを覚えています。この自転車を買ったら、一度はボトム・ブラケットのグリスアップはしなくてはいけないでしょう。でもコッターピンは抜けるんだろか。そしてこのクランクにあうコッターピンはまだ手に入るんでしょうか。こういう小物の入手は意外と難しいものですが、大旦那に言えば何とかなるでしょう。本当に無ければ旋盤を回してもらわなければなりません。
グリースニップルの付いたハブに、木リムというホイール。
木リムは体重何kgまでなら大丈夫なんでしょうか?今の僕は○7kgの立派なデブですから、乗った途端に木リムが「ベキッ」と折れてしまうかもしれません。これを乗るには、まず4〜5kgはダイエットしないと・・・。でも以前、大旦那のコレクションの中にダレッサンドロの木リムがあるのを目撃しているから、万が一潰しても大丈夫。<って、本当に乗る気かい・・・?

ハブのグリースニップルにグリースを入れるのに、グリースガンが要ります。僕も普通のグリースガンは持っているけど、このグリースニップルに合いそうもない。
でも買ってもそうそう乗りはしないでしょうから、グリースガンが必要なときには大旦那に借りればいいでしょう。<って、もう買う決心をしたのかい・・・?
鉄のステムに同じく鉄のマース型ハンドルが付いています。
いずれもクロームメッキが施してありますが、錆も曇りもなく丁寧に磨くだけでよさそう。メッキに入った錆には、ホント往生します。錆を取ろうとこすりすぎてしまうと、他の部分のメッキの輝きまで失われてしまうからです。
特に最近のものはメッキの質も悪く、厚みも薄い。よほど注意して磨かないと、すぐに輝きを失ってしまいます。昔のクロームメッキが圧倒的に良いのは、近年クロム(たぶん六価クロム)の処理がうるさくなったからでしょう。
ステムは緩いアーチを描いていますが、このアーチが実に優美でウツクシイ。マース型のハンドルにはグリップ部分、すなわちバーの下側にだけ黒のコットンのバーテープが巻いてあります。恥ずかしながら僕はいまだにバーの下が握れない。
走るときはほとんどブレーキ・ブラケットを握っています。そのブラケットにはゴムは巻いてありませんから、もし僕が乗るのなら何か巻かないと手が切れてしまいそうです。でも「この自転車を買えば嫌でもバーの下を握って走るようになる」と考えてしまう僕は余りにも「オロカモノ」・・・。

ユニバーサルのサイドプルブレーキに、メーカー不明のブレーキレバー。
ブレーキアーチは、昨今のショートアーチではありません。でもノーマルアーチとも言えない。ものすごく大きいんです。ロングアーチという言葉があるかどうか知りませんが、もしロングアーチという言葉があれば、ロングアーチでしょう。
このブレーキアーチはマッドガードの装着を想定していると考えられます。そして全体に細身で華奢で、アーチが大きいこともあって、剛性は低そう。また赤いブレーキゴムは食い付きが悪そうです。そもそも相手が木リムですからブレーキは効かないだろうな・・・。ってことは平坦な道しか走れないかも・・・。<もう買って乗る決心をしたようです・・・。
正体不明のシートピラー(サンプレックスのようにも見えます)に、ブルックスの皮サドル。
皮はすっかり乾いていますが、大きなひび割れもなくサドルオイルをやれば復活するでしょう。今まで何度か皮サドルに挑戦してきましたが、皮サドルを馴らすのはなかなか大変です。
でも「このサドルは初期の馴らしは済んでいて、簡単に馴染みそう」と考えてしまうのは、「あばたもえくぼ」というか「ホレた弱み」ということか・・・。
特徴的なのはリヤホイール。両切りのハブ(ダブルコグ)の片方に固定歯、もう一方はフリー付というのはお約束ですが、フリー付の方にはギヤが3枚付いています。
変速機はないので、ギヤを変えるにはウイングナットを緩めてチェーンを架け替えなければなりません。歯数まで数えると大旦那に「欲しい!」、「いくら!?」、「譲って!!!」という「真っ赤に燃えてる下心」を見透かされてしまいそうな気がして・・・。
まぁ、大旦那は舐めるように見ている僕を見て、そんな下心など先刻ご承知でしょう。タイヤはヤスリ目のチューブラータイヤ。使用された形跡はありませんが、だいぶ古いもののようです。まだ使えるでしょうか。
2009/9/27