Fixedの悦楽」でご紹介させていただいた名古屋在の自転車愛好家Nさんから、初めてプロショップを訪れる方に、とアドバイスを寄せていただきました。
プロショップといえば、気難しそうな店主に横着な常連。初めての方には敷居が高いところです。
でも、仲良くなってしまえば高い技術と豊富なノウハウ、ハードソフト両面においてこれほど心強い所はありません。ただ、大変高価な品物を扱っていることもあり、一定のマナーがあることも事実。
ベテラン、常連も素直に耳を傾けてもらいたいことも数多く含まれる、大変示唆に富む一文です。ぜひ参考にしてください。

最初は正装を
自転車乗りにとっての正装とは、ジャージを着て、レーシングパンツを履いて、きちんとヘルメットとグローブをつけ、足首までのソックスを履き、自転車用のシューズを履くことです。
雑誌などでレーシングパンツの上に、だぶだぶの半ズボンを履いたり、Tシャツなどを着ている写真を見かけますが、あれはあくまで撮影用です。正装がもっとも快適で、動きやすく、結果的には安全な服装です。
崩しのファッションも良いのですが、あなたがこれから乗ろうとしているのは、60km/hくらいは簡単に出てしまうロードレーサーだということを忘れてはいけないと思います。最初のうちは正装をするようにした方が、自分も「今日はハレの日だ」と思えるでしょうし、周囲にも「あいつはスピードを出して走ろうとしている」ということを、アピールできます。

○自分の中で手順を決める
ロードレーサーに乗っていると、目、耳、皮膚などを通じて、いろいろな情報が飛び込んできます。その情報をそのつど、そのつど、いちいち演算していたら、とても間に合いません。
キッパリと手順を決めてしまいましょう。それは「信号が黄色になったら停まる」とか、「狭い道で向こうからダンプが来たら、自転車から降りてやり過ごす」とかいうことです。
手順を決めておくと、咄嗟の時に演算に使える容量をたくさん残しておくことができます。咄嗟の時の中には、「あなたが直進で、向こうから右折しようとしている車が来る」とか、「わき道から車が出てこようとしている」とか、「路肩に車が停まっているが、その車が発進しようとしているのかどうかがわからない」いうのも含まれます。こういう時の判断は難しい。
道路交通法上はあなたに優先権があります。でも「そんなことはオレの知ったことではない。そこどけ、そこどけ、俺様が通る」という輩がいることも、「信号が黄色のときは、目を開けて突っ切れ。信号が赤の時には、目を閉じて突っ切れ」という手順を決めているドライバーが多いということも、知っておかないといけません。
「咄嗟の時に演算に使える容量をなるべくたくさん残しておく」のが、知恵というものだと僕は思います。
余談になりますが、車の運転の下手な僕は、車を運転する時にも手順を決めています。
「黄色いランプを点けてから、赤いランプを点ける(ターンシグナルやハザードランプを点けてから、ブレーキランプを点ける)」とか、「対向の直進車がおらず、右折した後の歩道に横断者がいないことを確認しない限り右折を始めない」とか、「自分の車のメーターが見づらくなったら、ヘッドライトを点灯する」とか、「ターンシグナルが三回点灯してから、ハンドルを切る」とか、「車線変更の際、二つのバックミラーを必ず確認する」などいうことです。
あくまで原則ですが、この手順を決めてから、ずいぶん余裕を持って運転できるようになりました。

○ヘルメットは必ず
ヘルメットは必須です。
ロードレーサーに乗り始めて、25年ほど経ちますが、その間に三つヘルメットを割りました。一回は前にも述べたブラックアイスに乗って、後頭部から落車したとき、そして去年(2007年)のジャム勝山でのMTBの6時間耐久レースでダウンヒル中に前方一回転の大落車、そこに後続の選手に突っ込まれた時(この落車で腰椎の横突起二本を骨折、今でもくっついていません。結果先シーズンのシクロクロスは全てキャンセル、今シーズンも参加を断念しました。ホント残念!)ですが、この二回はヘルメットが割れて当然の事故でした。
でも一番知っておいて欲しいのは、去年のグランフォンド吉野で、給水直後にゼッケンに引っかかったボトルを直そうとして、ハンドルを取られ「ポテッ」と転んだ時のことです。
再乗車したばかりで、スピードは10km/hも出ていませんでしたし、「そう言えばヘルメットが地面に擦ったな」というくらいの自覚しかありませんでした。何事もなかったように180kmを走り終え、自宅でヘルメットを洗っていた時に、ヘルメットが割れているのに気がつきました。本当に当たったか当たらないかくらいの衝撃でも、ヘルメットが割れるほどの衝撃が加わっているのです。
自転車に乗る以上、事故は一定の確率でおきます。その時に「ヘルメットさえ被っていれば・・・」ということは、あってはならないことだと僕は思います。それはあなたにとってもですし、あなたの家族にとってもです。

○最後に
自転車に乗っている時の補給の考え方など、まだまだ話したいことは尽きませんが、それはまたの機会にしたいと思います。
いろいろ小うるさいことを述べました。お気に触ることがあったら、お許しください。
最後に自転車スポーツは素晴らしいスポーツだと思います。あなたに良い出会いがありますように。
2008/11/15