健康と環境の追い風に乗って、広がる自転車人気。スポーツとしての道具として市民権を得るにしたがって、関連書籍も増えてきました。マニアックな読み物、自転車をテーマにした小説、漫画、私のように古い人間には予想だにしなかったメディアにも自転車、それもかなりマニアックな話が掲載される時代になりました。折に触れて「親父のつぶやき」で紹介させていただいてはおりますが、一度まとめてみてもよかんベェ、ということで自転車をテーマにした出版物を見かけるたんびに取り上げてみます。

五輪代表、競輪初の学士選手、画家。
そしてケイリンが世界選手権に正式種目として採用される影の尽力者として知られる終戦から高度成長期までの日本自転車シーンを語るに欠かせない人物の著書。
ヘルシンキ五輪代表に内定しながら家庭の事情で断念し、黎明期のロードレースや競輪界のエピソード、戦後の怪人、薩摩治八郎との交遊など読みどころが満載。特に、黎明期の競輪界の雰囲気、社会的背景も含めて、ですがこれは一読の価値あり、です。
正直なところ、文筆の専門家ではないので冒頭からしばらくは退屈ですが、(これは本人、というより編集者の怠惰)我慢して読んでいくと、どんどん引き込まれていきます。
絶版になっているようですが、図書館などで見つけられたらぜひ読んでみて下さい。歴史を知る、ってことはどんな分野であれ、一番大切なことだと思いますよ。
風に描く(1987) 加藤一(1925-2000)
文藝春秋
(ISBN4-16-341330-8)
2011/2/11

ご存じANA系の機内誌ですが、この号、イタリア特集「われらが村々のチクリ〜北イタリアの自転車工房を訪ねる」と題して、小さなチクリをいくつも取り上げています。
取り上げられているのが「カサーティー」(CASATI=モンツァ)、 木リムの「ギザッロ」(GHISALLO=コモ) 、「パッソーニ」(PASSONI=レッコ)「ムラーカ」(MURACA=ミラノ)、ズッロ(ZULLO=ヴェローナ)。これに最大25%、平均17%の斜度を持つ「ソルマーニの壁」やグランディス(GRANDIS=同)に乗るじいさまとか、19ページにもわたって紹介しております。ライターは石井光則氏。自転車関係のレポートも良く手掛けています。
それにしても、知っている人間しか知らんような(^^;)、マイナーだけどマニア心をくすぐるこの押さえどころは実に渋い。失礼ながらこうした一般のメディアで、こりゃすごいね、と思ってよくよく見るとコーディネーターが安田マサテル氏。ズッロのデザイナー、ペインターとして活躍した方で、こりゃ、まぁそーゆーことね。と納得したのでありました。
翼の王国(2009年11月号) 入手不可?
2011/2/13

負けず嫌いの小柄な少年、野々村輝がロードレース(とゆーか登坂)の魅力にとりつかれ、立派なクライマー、坂バカに成長していく。
1992年から1995年にかけて少年チャンピオンに連載された長編漫画で曽田正人の出世作。自転車をテーマにした漫画と言えば荘司としおの「サイクル野郎」(1974〜1982:少年キング)を持って嚆矢とするのでありますが、ロードレースに焦点を当てたのはこの作品が初めてではないか。以後、ブームが広がるにつれて、同様の作品が生まれていますね。
曽田正人作品の主人公は、もともと素質(天才)を持った若者が自分よりはるかに強く(見える)ライバルが立ちふさがったり、逆境に置かれたりの中、死にものぐるいで努力してたくましく成長していくというワンパターンだけど、結構面白い。主人公もさることながら、脇役のキャラ作りがうまいんよね。
ところで途中、ラルプデュエズだからレキップだよな。

野々村の活躍(バネストに所属してマイヨ・ブラン・ポア・ア・ルージュを着ている)を伝える紙面がフロントページになっている回がありました。本編ストーリーそのものはヨーロッパに片道切符で武者修行に旅立つところで終わってますから、野々村のその後はもちろん分からないのですが、この作者、シレェ、とこーゆー遊びが好きみたい。
カペタ、早い回から27を背負ってフェラーリに乗っている図が出ている、ってのも好きな人はご存じでしょう。
シャカリキ!(愛蔵版2006) 曽田正人(1968〜
小学館
ISBN-13: 978-4091868015(1巻)
  2011/2/13