MASI。数あるイタリアのチクリの中でも知る人ぞ知る老舗です。日本では、なぜか九州は福岡・南米商会が90年代から2000年代半ばまでオーダーを受けていました。発注する数は年間10本前後と決して多くはありませんでしたが、このフレームを何本も見ていると、自転車の奥深さ、面白さを改めて認識させられます。

<少数派のアルミパイプ達>
アルミパイプ全盛だった'90年代後半、MASIは一貫してデダチャイのSC61.10Aを使っていました。プロが好んで使っていた7000番台のパイプについては「硬くてダメだ」と言って、少なくとも南米商会向けには頑として首を縦に振らなかったですね。クロモリでもコロンバスを使わないとか、とにかくパイプに関しては譲ることはありませんでした。
ただ、この頃次々に出る軽量パイプはそれなりに試しています。
フレーム重量850gとの触れ込みの「U2」は1台日本に入ってきました。さて、今はどうしているでしょうか。500mmサイズで実測1kgですからびっくりするほど軽くはありませんが、61.10に比べてもヤワな感じがしましたですね。U2といえば、デ・ローザ製のマシンを何人か所有していましたがいずれも数年でクラックが入って寿命が尽きています。
カーボン繊維で補強した「EM2」は名古屋のNさんがオーダーした、カーボンバックフレームのロードレーサーに使われていました。インプレッションがありますのでそちらをどーぞ。このほか「V!07」ってのもあったはずだけど、見た記憶がありません。
2011/8/13

内ラグ式フレームの経緯
3V Volmetricaは他に例のない内ラグ式の接合で組み上げられています。ラグが特殊なのは当然ですが、パイプも別あつらえで肉厚は通常のオーバーサイズと同じですが、径が31.8mmではなく31.7mmなんですな。当然、一定のロットがまとまらないとメーカーも供給してくれない。
アルミ全盛の'90年代も終わりごろ、底が尽きかけて「もーお終い」というアナウンスが来たことがあります。「何とか存続を」との南米商会からの強い要望もあり、いったんは復活。2000ナン年でしたか、東京の有力店舗が新たにMASIとの取引を始めて、オーダーではなく「吊し」で入手できるようになったという経緯があります。
それでも2003年にはついに終了してしまいました。
2011/8/13

ピストラーダの乗り味
インプレッションを書くほどの技量もないし、「1953年型のエンジン(注:Nさんご本人のこと)より、2004年型のシャシー(注:MASIのこと)の方が絶対に早い」ということを頭において読んでくださいませ。
社長さんの組んでくれたホイール(カンパ・レコード・ストラーダのリム、DTのスポーク)に、ビットリア・コルサ・CXを9気圧にセットして出かけました。
乗ってすぐ感じたのは、実に優しい乗り味だということ。フォーク(曲げの優美なこと!!)と後ろ三角が、路面からのショックを吸収してくれます。特に後三角は本当に優しい。この優しい乗り味には、手組みホイールも一役買っていると思います。
チェーンからの音が大きいのは意外でした。最初はちょっと気になりましたが、そのうち気にならなくなりました。最初はちょっとガク踏み気味だったのが、だんだんと回せるようになったからかも知れません。
平地、緩い登り、緩い下りという条件では、フリー付きの自転車より、絶対に楽しい。自転車が目的地まで勝手に連れて行ってくれる感じです。この感じは3Vボルメトリカのロード(残念ながらアメリカ・マージ)を、pmpのキットで固定歯にした自転車でも味わえるのですが、もっとスイスイと連れて行ってくれます。30分ほど登り続ける所もあるのですが、フリー付きではまず登れないギヤ比(48X19)でも、シッティング、ダンシングを取り混ぜながら、登りきってしまいました。
 一恐いのが、急な下り。脚が回りきってしまう感じで、ちょっと大変でした。もっともこれは僕がダウンヒルが苦手というせいで、マージのせいではありませんね。
疲れてきても自転車が背中を押してくれる感じで、脚が売り切れるということもありませんでした。固定歯はフリー付きよりも、いろいろな筋肉を使うためでしょうか(乗り終えた後、いつもは余り感じない大腿の裏側、臀部に張りがあります)。それともリヤホイールのフライホイール効果なんでしょうか。回ろうとするホイールに、軽く力を加えてやるつもりでペダリングすると、ドンドン走ってくれます。 
ただ固定歯はフリー歯に比べて、対クルマ、信号などでのストップ・アンド・ゴーなどで、かなり緊張します。脚は売り切れてはいないのに、精神的な緊張が続かないという一面はあると思います。走行時間約3時間半、Ave約24km、走行距離約90kmでしたが、体よりもココロが疲れました。 でも若い衆にブチ抜かれても、「固定歯だもんね〜。」と全く気にならないのは、オッサンにとっては実にありがたい。
最後に特筆しておきたいのが、塗装の素晴らしさ。見る人によって「西洋カラシ」と言ったり、「ワサビ」と言ったり、「金色」と言ったりします。僕としては、「プリマベーラ」という表現がピッタリな自転車だと思っています。
まだ1日乗っただけのインプレッションでしたが、しばらくはこれにばっかり乗りそうです。
2004/4/14

Wing復活!>
masi-wing01.jpg (233759 バイト)Linup」でご紹介していますが、国内では貴重なMASI-WINGが復活しました。
ダウンチューブの真ん中付近下部に、何かをぶつけたような大きな凹みがあったのですが、南米社長が引っ張り出して修復。もちろん何の問題もありません。
近年のMASIはロゴが塗り込みなので再塗装する際に、大変困るのですが、あるお店にお願いして寸分違わぬロゴができるようになりました。
これもそのうちにご紹介できると思います。
早速、フルカンパで組まれて元気に走っておりますが、オーナーによると「硬いどころか、大変しなやかで気持ちよく走れる。重たいフレームで重量が9kg半ばにもなるのに、上りも全然苦にならない」とか。この辺のノウハウは見事、というしかありませんね。
発見時の写真はこちら
2009/3/14