MASI。数あるイタリアのチクリの中でも知る人ぞ知る老舗です。日本では、なぜか九州は福岡・南米商会が90年代から2000年代半ばまでオーダーを受けていました。発注する数は年間10本前後と決して多くはありませんでしたが、このフレームを何本も見ていると、自転車の奥深さ、面白さを改めて認識させられます。

幻のカーボンフレーム
発注したにもかかわらず、結局手元に届かなかったMASIのカーボンフレーム。もし手元に届いていたら、そこで遍歴が終わっていたのでしょうか。
2003年暮れ
MASIから「カーボンフレームを造るぞ。フルオーダーだからね。もうしばらくしたらよろしっこ」という連絡がありましてね。当時、フルオーダーカーボンってそんなになかったので興味津々。当初のアナウンスではデダチャイが開発した「DCS」(詳細はこちらを参照)なるラグ接合フレームというアナウンスでしたね。
2004年2月
オーダー開始のアナウンス。ホームページには丸パイプを無骨なラグで接合したシンプルなフレームが紹介されておりました。
2004年3月
ホームページの写真以外、詳細不明でしたが、見切り発車。常連さん1と計2本、まぁ見本のつもりで発注しました。
2004年6月
MASIからのファクスでデダチャイのDAVSを使用、インテグラルヘッドになるとの連絡。「ホームページの写真と違う」って返事を出したら、しばらくして「品質は保証する。任せなさい」と返ってきましたな。
2004年7月
MASIからメールで 「オーダーにある《Deep Gold》はどんな色合いかぃね」と私に直接の問い合わせ。あぁだこーだ(どっかにある金ラメス●ベイスのよーな色とはさすがに書かんかったが)とイメージを伝えたらほどなく「分かった。楽しみに待っててねん」と返事がありました。
2004年秋
資料がどっかにいったので月日不明。「DAVSはMASI Standard」に達してない。ちょっと待ってねん」と連絡あり。
2004年11月
南米商会にメールで「「よーやく準備ができた。丸いパイプで簡素でとっても素敵(marvelousとありましたな)だぞ。興味があるなら、連絡くれ」と。もちろん「オーダーしたの忘れちゃったの? 注文はまだ有効だから、造ってちょーだい」つてメール出しましたが……。
2005年3月
南米商会に送られてきたニューモデルカタログに、カーボンフレームの掲載が。メールで「あの注文、どーなった? いつまでも待ってるからね」と問い合わせましたが、以後、何の連絡もありません。
(T_T)
2011/9/14まとめ

カーボンバック・インプレッション
名古屋のエンスー、Nさんが2004年7月に入手されたアルミ・カーボンバックフレームは珍しいEM2(2.03となってました)。オーナーの強い希望でクロモリフォークを付けていますのでヘッドはノーマルサイズ。シートステイはデダチャイ・ブラックマジック、チェンステイがデダチャイ・モノボックスを使っています。
以下、おじさんライダーがどう感じたか。の、インプレッションです。
3台のMASIをお持ちのNさんらしく、クロモリとアルミの違い、他のメーカーにはない独特のクロモリフォークの乗り味など、MASIの特徴を実に良くつかんだレポートのように思います。

旧型ボーラにビットリアコルサCXを9気圧にセットして出かけました。まず思ったのは「やっぱりマージだ。」という事。初乗りにもかかわらず、ずっと慣れ親しんだ乗り味です。ティグ・インテグラル、ピストラーダと同じく実にマイルドで、体のどこにも突き刺さってくるところがありません。巷で聞く「アルミは硬い」とか、「アルミは体に優しくない」ということは全く感じません。
でもこの二つは明らかに違う。鉄マージがフレーム全体で「背中を押してくれる」感じなのに対し、カーボンバックは前三角は巌のように硬く(剛性が高いということ)、後ろ三角とフォークがしなやかにたわんで「背中を蹴飛ばしてくれる」感じです。コーナーの立ち上がりなどでこの感じが楽しくて、不要なダンシングを繰り返してしまいました。多分これは路面からの微振動をカーボンバックが吸収してくれるために、トラクションがきちんと路面に伝わるためではないでしょうか。
変な表現ですがフォークよりもバックの方が速い感じです。その意味ではフォークもカーボンの方が良いのかも知れません。でもアルベルト・マージの曲げた鉄フォークは、僕にとっては何物にも代えがたいものです。
ヒルクライムでは鉄マージ(+ニュークリオン)より明らかに速い。恥ずかしながら29Tを保険のギヤとして入れているのですが、26Tで十分でした。ちょっとムリすれば23Tでも行けてしまいそう。ただ鉄マージとカーボンバックでは、違ったペダリングを要求されると感じました。鉄マージはフレームのしなりを利用する感じで、多少ガク踏みでもそれなりに走ってくれますが、カーボンバックはひたすらモーターのようなペダリングを心がけた方が楽だし速かったようです。

ダウンヒルでは60km/hを越してもまだ加速しようとします。もちろんボーラの高速性能がオッサンでは想像もつかないほど高いのでしょうが、それだけではない。60km/hを超しても剛性の高い前三角が車体を安定させ、フォークと後ろ三角が路面からの微振動を綺麗に吸収してくれるということがあると思います。
ダウンヒル途中でいつもなら「ガツン!」というショックを覚悟するちょっと大きな段差に出くわしても、「アレッ」と思うほどスムーズに通過できるのは「同じ鉄フォークなのにバックが違うとこうも違うものか。」と不思議でした。
さて鉄マージとカーボンバックどっちが楽しいかというと、どっちも楽しい。
ただ「さあ走れ!!」と迫ってくる、言い換えれば「乗り手をやる気にさせてくれる」のはカーボンバックのようです。でもその分だけ心拍も高めになっていました。
いつもの事ですが、塗装は素晴らしい。姉妹車ということを狙って同じ色をお願いしました。「同じ色で2台というのはどうか?」と思ったのですが、ロゴがピストラーダは白、カーボンバックが赤というだけで、随分印象が違います。本当に満足しています。
 最後になりましたが、ティグ・インテグラル、ピストラーダ、カーボンバックと3台にわたりお世話くださった南米の社長さんと副社長さん、そして産婆さんを務めてくださったgodzziさんには本当に感謝しております。ありがとうございました。
2004/8/22

大径TIG Integral
南米商会がオーダーしたTig IntegralはデダチャイSAT14.5(ちょっと前はエクセル)を使っていましたが、2004年6月からはさらに大径化しています。トップチューブとシートチューブは35mmでシートチューブ31mm。ダウンチューブ38mmと現行よりひと回り太くなります。軟弱なおやぢの足には、先代のエクセルパイプでちょうど良いぐらいだったのが、デダチャイ・ゼロでひと回りシャキッとなって、さらに大径化、ということはけっこうきついかな?
さらに付け加えれば「もうコラム径1インチのカーボンフォークは手に入らん、1・1/8(オーバーサイズ)になるとばってが、良かと?」(って方言で言うわけないけど)、って宣告されましたです。そーゆー時代になっちまったってことです。(+_+)
この大径フレーム、2004年にMASI工房を訪れた東京在住のYご夫妻が、それらしいフレームを目撃、つうか手にしています。
諸般の事情で、詳しく問いただすことができなかったそうですが、まず間違いないでしょう。
ご覧くださいMASI。m(_ _)m
結局、これも眼にすることはありませんでした。ヨーロッパに行けば見ることもあるのでしょうが…。
2011/9/14まとめ